執筆者:堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)
こんにちは、院長の堀田です。
ヒトの腸の働きを学ぼうでは、腸の状態が全身の精神的状態にも関わる可能性を紹介しました。
今日は「病は気から!?」といわれる一例として「炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)では、精神的状態が病状に影響する」ことが示されていますのでご紹介したいと思います。
(1) 腸と精神的状態の関係
脳と腸が自律神経やホルモンなどを介して関連していることは脳腸相関といわれます。最近はこの「腸」に病変を生じる炎症性腸疾患と、脳が関わる精神的状態に関連があるという可能性が指摘されるようになってきました。
この分野はまだ取り組みが始まったばかりで、まだ未解明な領域が多いです。そのため例えば「精神的ストレスが炎症性腸疾患の原因になる」のかどうか、はっきりとわかっていません。
しかし興味深いことに、海外では「精神的ストレスがあることが炎症性腸疾患が悪化する原因になりうる」1ことが示されています。このことから、やはり精神的状態が腸の病気である炎症性腸疾患に影響を及ぼす可能性は否定できません。
(2) 精神的状態を良くすれば、炎症性腸疾患にも良い影響が?
現在ではまだ「精神的状態を良くすることで、炎症性腸疾患が良くなる」ことは証明されていません。しかし海外では、炎症性腸疾患の患者さんの治療においては心理面などへの配慮が大切であり必要時には精神科医や心理士などの専門家が対応することが勧められています。
この心理面への配慮は、難病に指定され未だ完全に治すことが難しい炎症性腸疾患においては長い間の治療を続けていく必要があるという点からもとても大切なことだと思います。
これからこの分野の研究等が進み「炎症性腸疾患を完全に治して乗り越える」助けになることに期待したいと思います。
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参考文献
- Bernstein CN, et al. Am J Gastroenterol, 105: 1994-2002, 2010