今回は10人に1人が抱えていると言われる過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の概要と診断・治療について紹介します。
概要
IBSは、小腸や大腸に炎症などの異常が見つからないにも関わらず、便の異常や腹痛・膨満感などの消化器症状が起こっている状態のことをいいます。
およそ日本人の10%程度、10人に一人の方がこの病気であるといわれていて、自分も当てはまるかもと思われる方も多いのではと思います。
日本では女性のほうが多いと言われており若いうちに発症することも多いです。
命に関わることは少ないですが、日常的な腹痛・下痢、そしてトイレに駆け込まなければいけないことも多く生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。
主な症状
腹痛や腹部の不快感や膨満感などが数か月以上続き、同時に下痢や便秘などの便の症状が続きます。
診断基準と分類
IBSの診断はローマⅢ基準という基準に沿って行われます。具体的には以下の2つの内容となります。
- 最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こること
- 下記項目のうち2項目以上の特徴を示す場合
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- 排便によって症状がやわらぐ
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
なお、小腸や大腸に炎症や腫瘍などがないことがIBSの前提となるため、大腸内視鏡検査などで腸に異常がないことを確認することが重要です。
IBSの分類
IBSはブリストル便形状尺度という指標を用いて、4つのタイプに分類されます。タイプごとに治療内容が異なることがあるため、自分がどのIBSタイプなのかを確認することが大切です。
下痢型
下痢型では形やない便や固形物を含まない水のような便が多いのが特徴です。ストレスがかかると腹痛がおこることや便意を催すことが多いです。
便秘型
便秘型では小さな便の塊が分離したような木の実状の硬い便や肛門を通過しないような便や、さらには小さな便の塊がついているソーセージ状の便が特徴です。ストレスがかかると便秘の症状がひどくなる患者さんが多いです。
混合型
便秘と下痢の症状が同じような頻度で起こる場合に混合型に分類されます。
分類不能型
便の症状がそこまで強く出ていない(下痢でも便秘でもない)IBS患者さんが該当します。
主な治療
IBSでは生活習慣の改善が重要と考えられています。3食を規則的にとることや睡眠、休養をしっかり取ること、ストレスをためないことなどが大切です。特に食事に関しては特に海外で様々な介入方法が検討されています。特に低フォドマップ(FODMAP)食については様々な大規模臨床試験が行われており、今後日本においても研究が期待されています。
薬物療法では、腸の動きを整える消化管機能調節薬や、体に有益な細菌が含まれるプロバイオティクス、また便の水分バランスを調整する薬などが下痢型、便秘型の患者さん両方に使われます。そのほかに便秘の方は、便を柔らかくする薬、そして下痢型の方には腸の運動を整える薬などが使われます。また必要な際には心療内科や精神科の医師の診療も紹介することもあります。
おわりに
IBSでは腸に炎症や腫瘍がないかなどを内視鏡検査などで確認することが非常に重要となるため、IBSに関連する症状があらわれた際は消化器専門医に相談しましょう。