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過敏性腸症候群(IBS)とグルテンフリー食

[2021.03.05]

執筆: 宮﨑 拓郎(公衆衛生学修士(栄養科学)アメリカ栄養士会所属アメリカ登録栄養士
監修: 堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)

みなさんこんにちは。米国登録栄養士の宮崎です。

今回は、過敏性腸症候群(IBS)とグルテンフリー食について紹介します。

グルテンフリー食とは?

グルテンとは、小麦、ライ麦、大麦などに含まれるたんぱく質の一種です。小麦に含まれるグルテニン(glutenin)とグリアジン(Gliadin)というたんぱく質に水を加えてこねることで、グルテンになります。グルテンには粘度と弾性が強いという特性があり、様々なお菓子や料理に使われています。

グルテンフリー食とは、このグルテンが含まれない食品・食事のことを指します。

小麦、ライ麦、大麦が含まれないものが中心です。またパスタなどについても”グルテンフリー”と記載のあるものはグルテンが製造工程などで除かれていてグルテンが含まれていません。

一方で、グルテンは添加物などにも広く使われているため、完全に取り除くことが難しいたんぱく質と言われています。レストランなどでは小麦などが含まれていなくても、調理の過程などでグルテンが混ざることもあります(例えば別の料理に使った調理器具を使った際にグルテンが混じってしまうなど)。

一見小麦などが含まれていないようにみえても、グルテンフリーと書かれていない場合にはグルテンが含まれている場合があります。

 

グルテンフリー食と関係があるIBS以外の疾患

グルテンフリー食は、もともとはセリアック病 (Celiac Disease)患者や小麦アレルギー患者を対象として普及し、その後、グルテン不耐症/過敏症 (Gluten Sensitivity)が注目されるようになり、いわゆる”流行りの健康食”として広くアメリカで普及しています。もちろんIBS患者の間でも広く活用されています。

 

セリアック病(Celiac Disease)

セリアック病とは、グルテンに関する遺伝性の自己免疫性の疾患です。グルテンを摂取すると、腸粘膜に炎症が生じたり、腸管にある絨毛と呼ばれるひだのような細胞が萎縮します(1)。その結果、下痢などの消化器症状が現れたり、あらゆる栄養素の腸管からの吸収ができなくなり栄養不良に繋がります。

セリアック病の海外の発症率は、100人に1名程度であり女性に多いと言われています(2)。日本ではまだ患者数などは把握されていません。セリアック病の患者は、生涯にわたりグルテンをしっかりと食事から取り除くことが必要であり、グルテンフリー食が必須となります。

 

グルテン不耐症/過敏症 (Non-celiac Gluten Sensitivity)

近年注目を集めているのがグルテン不耐症/過敏症です。グルテン不耐症/過敏症は、セリアック病、小麦アレルギー以外の方で、グルテンが含まれる食事を食べると、腹痛・下痢などの消化器症状が生じる疾患/症状です(3)。

しかし、まだ明確な診断基準や診断方法・マーカーなどがないことに加え、IBSとの症状のオーバーラップ多く、解明されていないことが多いです。今後の更なる研究が期待されています。

 

グルテンフリー食のIBSに対する科学的なエビデンス

IBS患者に対するグルテンフリー食の研究はかなり盛んに行われてきました。これまでに行われてきた複数の研究をまとめて解析した研究では、グルテンフリー食では、IBSの総合的なスコアの改善は示唆されたものの、統計学的に有意な改善は認められませんでした(4)。

グルテンフリー食に関しては、グルテンにフォドマップ(FODMAP)グループの一つであるフルクタンが含まれることから、グルテンを取り除いた時にIBS症状が緩和される可能性があることに加え、これまでの研究の臨床試験の設計そのものが科学的根拠を作る上で十分ではなかったことも指摘されています(5)。

そのような背景もあり、私がアメリカにいた時も、医師や管理栄養士から、一般的なIBS患者に対してグルテンフリー食が勧められることはあまりありませんでした。

 

グルテンフリー食に関する留意点

グルテンフリー食を実施される場合に懸念されていることは、栄養バランスの良い食事ができなくなる可能性があることです(5)。

グルテンは、小麦などに加え、前述したように様々な料理や食品に含まれており、それらを取り除くことで結果的に体にとって重要なビタミンやミネラル、食物繊維が十分に摂取できなくなる可能性があります。

特に全粒パンやその他の全粒製品にはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、栄養価的には最も推奨される食品群の1つとなります。

セリアック病や小麦アレルギーがある、もしくはIBS患者さんでグルテンもしくはグルテン含むフルクタンが消化器症状のトリガーになる場合を除き、過度にグルテンを制限することには注意が必要です。

 

以上いかがでしたでしょうか。このブログではこれからも様々な食事療法を取り上げていきたいと思います。

 

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参考文献

  1. Caio G, et al. Celiac disease: a comprehensive current review. BMC Med. 2019 Jul 23;17(1):142.
  2. Ludvigsson JF, Murray JA. Epidemiology of Celiac Disease. Gastroenterol Clin North Am. 2019 Mar;48(1):1-18. 
  3. Barbao MR, et al. Recent advances in understanding non-celiac gluten sensitivity. F1000Research. 2018:7. 
  4. Dionne J, et al. A Systematic Review and Meta-Analysis Evaluating the Efficacy of a Gluten-Free Diet and a Low FODMAPs Diet in Treating Symptoms of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2018 Sep;113(9):1290-1300. 
  5. Dolan R, et al.The Role of Diet in the Management of Irritable Bowel Syndrome: A Focus on FODMAPs. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2018 Jun;12(6):607-615.

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