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潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)で血便などの症状がないのになぜ生物学的製剤などを勧められるか?

[2021.10.26]

執筆者:堀田 伸勝 (板橋区のほりた内科・胃腸内視鏡クリニック 院長)

今回は血便などの症状がないのに、どうして生物学的製剤などを勧められるかという多くの患者さんがご質問いただく内容にお答えしたいと思います。この内容は私たちIBDの専門の医師の中でも、現在様々な研究が取り組まれているところで判断に非常に悩むことがあります。

3つの寛解とその定義

この内容はやや専門的になりますが、以下の3つの言葉の違いを理解していただくと、良くわかると思います。

1. 臨床的寛解(りんしょうてきかんかい)

2. 内視鏡的寛解(ないしきょうてきかんかい)

3. 病理学的寛解(びょうりがくてきかんかい)

臨床的寛解

血便などの症状がなく自分の体調が安定している状態のことです。

内視鏡的寛解

血便などの症状がないだけでなく、内視鏡で確認できる範囲で粘膜に炎症がない状態です。

病理学的寛解

血便などの症状がなく、内視鏡でも粘膜に炎症がなく、かつ、内視鏡で生検(せいけん)を行った粘膜を顕微鏡で見ても炎症がない状態のことです。

3つの寛解の違い

つまりこの3つは全て「病状が落ち着いている(寛解)」ことを示していますが、その強さには違いがあり、1、2、3の順番に、つまり3が最も「寛解の度合いが強い」ことになります。簡単に言うと、「3が最もしっかりと病状が落ち着いている」ことになります。

これまでの研究から、「1. 臨床的寛解」であっても、そのままにしておくと、その後に病状が悪化して血便などが起きてくることがわかっています。そのためにたとえ血便などの症状がなくても、「2. 内視鏡的寛解」や「3. 病理学的寛解」が達成できていなければ、何らかの対応が必要となるのです。

つまり「血便などの症状がない」だけでは、本当に病状を安定させるためには不十分なのです。そのため「内視鏡で見た粘膜に炎症がある」または「顕微鏡で粘膜に炎症がある」状態であれば、何らかの治療を行うことが必要となるのです。

3つの寛解に対する治療法

それでは、その時の治療方法は何を行うのでしょうか?

これには個人差があり、それぞれの患者さんごとに異なります。

例えば、5-ASA製剤(ペンタサR、サラゾピリンR、アサコールR 、リアルダRなど)であったり、場合によってはステロイドや生物学的製剤などが必要になることもあります。

そのため、私たちIBD専門の医師はそれぞれの患者さんが「どういう状態の寛解なのか」つまり、「上に挙げた3つのうちのどの寛解の状態に当てはまるのか」ということを常に考えながら診療を行っているのです。

最後になりましたが、ご質問への回答としては「たとえ血便などの症状がなくても、場合によっては何らかの治療が必要になる場合がある」ということになります。

今回はやや専門的な内容になりましたが、IBDの診療においてはとても大切な内容です。

ぜひ同じような疑問を持たれている方がいらっしゃいましたら、主治医の先生とよくご相談したり、また必要に応じてIBD専門の医師へのセカンドオピニオンも含めてご検討していただけたらと思います。

 

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