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スタッフ・専門家ブログ

腹痛・下痢・便秘などを伴う過敏性腸症候群(IBS)に効果的なサプリメントは?(2021.10.26更新)

執筆:宮﨑 拓郎 (米国登録栄養士・公衆衛生学修士(栄養科学))

今回は現在もアメリカで盛んに研究が行われている過敏性腸症候群(IBS)へのサプリメントの効果について紹介します。

IBSは原因不明の炎症などの異常が見つからないにも関わらず、下痢、便秘などの便の異常や腹痛・膨満感などの消化器症状が起こる状態のことを指します。

IBSの有病率は非常に高く、10人に1人が罹患しているとも言われていますが、いまだ薬物療法は限られており、食事療法や認知行動療法などメンタルへの介入などに注目が集まっています。

食事療法の中で、サプリメントについても古くから研究が盛んに行われており、少しずつその科学的根拠が整理されてきています。

今回はそのうち特に認知度が高いサプリメントとそのサプリメントに関する研究を紹介します。

ぺパーミントオイル

ペパーミントはシソ科ハッカ属に属する植物です。古くからIBS症状の改善に使われてきました。

ペパーミントオイルのサプリメントは、液体やカプセルタイプのものがあります。副作用も一般的に多くはないと認識されていますが、逆流性食道炎の症状が現れることがあります。

これまでの研究

IBS混合型とIBS便秘型の計72名に対し、3層にコーティングされたペパーミントオイルサプリメントを4週間投与した試験では、ペパーミントオイル群はプラセボ群と比べて、IBS症状全般を改善し、腹痛・不快感、膨満感、痛みをそれぞれ有意に改善しました。(1)

上記含めた複数の研究の結果を踏まえ、アメリカ消化器病学会は、エビデンスレベルは低く、推奨度も弱いとしながらも、IBS症状改善を目的としたペパーミントオイルの使用を推奨しています。(2)

STW-5(Iberogast:イベロガストR)

イベロガストはペパーミントやカモミールなど9種類のハーブで構成されたサプリメントです。

これまでの研究

208名のIBS患者(すべてのタイプを包含)を対象とした研究において、STW-5はプラセボ群と比べて、腹痛スコアやIBS-SSスコアを有意に改善しました。(3)

グルタミン

グルタミンは必須アミノ酸の一つで、短期間で分裂する細胞のエネルギー源となります。

これまでの研究

106名の感染性腸炎後IBS患者を対象としてグルタミン群とプラセボ群に無作為に割り付けた試験では、8週後にグルタミン群においてIBS-SSスコアや便回数などで有意な改善が確認されました。(4)

プレバイオティクス

腸管の善玉菌のえさとなり、人の健康に有益な食品成分で、オリゴ糖や食物繊維の一部などが該当します。

これまでの研究

これまで行われた8つの臨床試験をまとめて解析した研究では、プレバイオティクスは、善玉菌であるBifidobacteriumなどの増加は認められたものの、IBS症状の改善は確認されていません。(5)

おわりに

今回はIBSに対して研究が多く行われているサプリメントについて紹介しました。

ここで紹介したサプリメントは、いずれもエビデンスレベルが十分とは言い切れないものばかりですが、薬物療法が限られているIBSにおいては今後の研究が期待されます。

またサプリメントを使用については、主治医の先生に相談することが推奨されます。

なお副作用等が見られた場合は速やかに中止しましょう。服用を3-4週間以上続けていて効果が実感できない場合も中止が選択肢となります。

食事療法と同様にすべてのIBS患者に効果のあるサプリメントは存在しません。主治医の先生と相談しながら自分の体調にあった食事やサプリメントを見つけましょう。

当院の食事療法カウンセリングについて

参考文献

1. BD Cash, et al. A Novel Delivery System of Peppermint Oil Is an Effective Therapy for Irritable Bowel Syndrome Symptoms. Dig Dis Sci. 2016 Feb;61(2):560-71.

2. AC Ford, et al. American College of Gastroenterology Monograph on Management of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2018 Jun;113(Suppl 2):1-18.

3. A Madisch, et al. Treatment of irritable bowel syndrome with herbal preparations: results of a double-blind, randomized, placebo-controlled, multi-centre trial. Aliment Pharmacol Ther. 2004 Feb 1;19(3):271-9.

4. QQ Zhou, et al. Randomised placebo-controlled trial of dietary glutamine supplements for postinfectious irritable bowel syndrome. Gut. 2019 Jun;68(6):996-1002.

5. B Wilson, et al. Prebiotics in irritable bowel syndrome and other functional bowel disorders in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2019 Apr 1;109(4):1098-1111.

潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)で血便などの症状がないのになぜ生物学的製剤などを勧められるか?(2021.10.26更新)

執筆者:堀田 伸勝 (板橋区のほりた内科・胃腸内視鏡クリニック 院長)

今回は血便などの症状がないのに、どうして生物学的製剤などを勧められるかという多くの患者さんがご質問いただく内容にお答えしたいと思います。この内容は私たちIBDの専門の医師の中でも、現在様々な研究が取り組まれているところで判断に非常に悩むことがあります。

3つの寛解とその定義

この内容はやや専門的になりますが、以下の3つの言葉の違いを理解していただくと、良くわかると思います。

1. 臨床的寛解(りんしょうてきかんかい)

2. 内視鏡的寛解(ないしきょうてきかんかい)

3. 病理学的寛解(びょうりがくてきかんかい)

臨床的寛解

血便などの症状がなく自分の体調が安定している状態のことです。

内視鏡的寛解

血便などの症状がないだけでなく、内視鏡で確認できる範囲で粘膜に炎症がない状態です。

病理学的寛解

血便などの症状がなく、内視鏡でも粘膜に炎症がなく、かつ、内視鏡で生検(せいけん)を行った粘膜を顕微鏡で見ても炎症がない状態のことです。

3つの寛解の違い

つまりこの3つは全て「病状が落ち着いている(寛解)」ことを示していますが、その強さには違いがあり、1、2、3の順番に、つまり3が最も「寛解の度合いが強い」ことになります。簡単に言うと、「3が最もしっかりと病状が落ち着いている」ことになります。

これまでの研究から、「1. 臨床的寛解」であっても、そのままにしておくと、その後に病状が悪化して血便などが起きてくることがわかっています。そのためにたとえ血便などの症状がなくても、「2. 内視鏡的寛解」や「3. 病理学的寛解」が達成できていなければ、何らかの対応が必要となるのです。

つまり「血便などの症状がない」だけでは、本当に病状を安定させるためには不十分なのです。そのため「内視鏡で見た粘膜に炎症がある」または「顕微鏡で粘膜に炎症がある」状態であれば、何らかの治療を行うことが必要となるのです。

3つの寛解に対する治療法

それでは、その時の治療方法は何を行うのでしょうか?

これには個人差があり、それぞれの患者さんごとに異なります。

例えば、5-ASA製剤(ペンタサR、サラゾピリンR、アサコールR 、リアルダRなど)であったり、場合によってはステロイドや生物学的製剤などが必要になることもあります。

そのため、私たちIBD専門の医師はそれぞれの患者さんが「どういう状態の寛解なのか」つまり、「上に挙げた3つのうちのどの寛解の状態に当てはまるのか」ということを常に考えながら診療を行っているのです。

最後になりましたが、ご質問への回答としては「たとえ血便などの症状がなくても、場合によっては何らかの治療が必要になる場合がある」ということになります。

今回はやや専門的な内容になりましたが、IBDの診療においてはとても大切な内容です。

ぜひ同じような疑問を持たれている方がいらっしゃいましたら、主治医の先生とよくご相談したり、また必要に応じてIBD専門の医師へのセカンドオピニオンも含めてご検討していただけたらと思います。

 

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