こんにちは。ほりた内科・胃腸内視鏡クリニックの管理栄養士です。
今後皆様に有用な情報をお届けするべく頑張っていきたいと思います。
少しずつ風が冷たくなり、暑い夏が過ぎ、急に冬になってきましたね。
今年も残り2か月となりました。内視鏡クリニックとしては、繁忙期を迎え、毎日たくさんの方が内視鏡検査を受けに来院されています。
本日は、当院の堀田院長が専門としているIBD(炎症性腸疾患)患者さまのお食事について管理栄養士より詳しくお話したいと思います。
1. 炎症性腸疾患とは?
まず、IBD(炎症性腸疾患)とは、腸が慢性的に炎症を起こす病気で、潰瘍性大腸炎とクローン病という2つの疾患の総称です。炎症性腸疾患に罹患すると、激しい腹痛が続いたり、下痢が止まらなくなったりします。
完治は難しく、原因も特定できていないので国の難病に指定されています。
そのため一度罹患すると、病気と生涯付き合っていく必要があります。10代から20代くらいの比較的若年者に多く発症する病気です。
この時期は身体を作るうえで大切な時期であるとともに、進学・就職など人生においても大切なイベントがある時期なので、症状に応じた食事や生活への配慮が必要です。
2. 食事で体調をコントロール
この病気は病状の強さに個人差が大きいように、何をどれだけ食べてよいかも個人差がありますので少しずつ自分に合う食材と合わない食材を把握していきましょう。
はじめのうちは、写真に撮る、アプリで記録をする事も有効です。2週間から1か月を目安にその時の症状も合わせて記録するとより自分にあった食生活を見つけやすいですし、相談に来られた時にアドバイスも的確にお伝え出来ます。
原則としては、病状が悪化している時には消化管に負担をかける脂肪や残渣(食物繊維)・刺激物(香辛料)は避けましょう。
その様な時には身体に必要なエネルギー摂取の観点からは、比較的高カロリーである事が推奨されています。風邪を引いたり、ストレスを感じたりと体調がすぐれない時にも同様です。
3. 病態別の食事のポイント
(1) 潰瘍性大腸炎
食事が原因で再燃することは少ないと言われていますので、あまり神経質にならずに、バランスの良い食生活を心がけましょう。
1. 寛解期(症状が落ちついているとき)
症状が落ち着いている場合、厳密な食事制限は必要ないといわれています。
ただ、暴飲暴食や脂っこいものを1日にたくさん摂るのは控えましょう。
脂質の理想的な摂取量は、総エネルギーの20~25%、成人では1日40~60g程度が目安です。
2. 再燃時(症状が悪化しているとき)
低脂質を心がけましょう(脂質30g以下を目標にしましょう)。
下痢・発熱がある場合はこまめに水分補給を行い、ナトリウム・カリウムなどのような電解質も補給できるものを選びましょう。
飲食物は冷たいもの・熱すぎるものは避けましょう。
(2) クローン病
1. 寛解期
消化管全体に発症するクローン病は食事管理が重要です。低脂質・低残渣・低刺激・高カロリーが基本です。
脂質30g/日以下にしましょう。狭窄のある方は、低残渣食(低食物繊維)にしましょう。
以前食べたもので下痢・腹痛のあった食品は避けましょう。乳製品なども注意が必要です(乳糖不耐症の方が多いため)。
2. 再燃時
症状によっては、成分栄養剤の頻度を増やしたりすることも有効です。症状がお辛いようであれば、すぐ受診して下さい。
外食や中食は成分表示を必ずチェックしましょう
4. 日常の食事の工夫
毎日、毎食手作りでご飯が食べられるとは限りません。
そんな時は、メニューに成分表示があるお店を選ぶことをおすすめします。またマヨネーズ・ドレッシングは自身で選択できるときは使わないようにする、ノンオイルドレッシングにするといった方法でも、脂質を減らすことができます。
症状が辛いときは、消化の良い食事を中心にする・脂質の多いもの、食物繊維の多いものを避ける・規則正しい時間に食べるなど自分の体調にあった対応をすることも大切です。そのうえで、外食はあまり多くならず、できるだけ1日1回を目安にしましょう。
比較的安心な外食は、天ぷらを避けたうどん類・お寿司(白身魚やマグロの赤身)・鉄火丼・鮭や梅のおにぎり・焼き鳥(ささみ・つくね)などがあげられます。
また、コンビニ・スーパーなどで加工品などを買うときは面倒くさがらずに表示を確認しましょう。
栄養成分表示や原材料を確認し、脂質の量や自分が苦手な食材が入っていないか再度見直しましょう。例えば、菓子パンやクッキーなどバターや牛乳をたっぷり使う食品は脂質が多く含まれます。
サンドウィッチの具材は低脂質でもマーガリンやマヨネーズが塗ってあり、野菜が摂取できるからという理由で選択すると、意外と脂質が高かったりします。食品添加物の中には、体に合わないものもあります。比較的安心なのは、おにぎり・うどん・揚げ物が主菜ではない和食弁当などです。
<脂質の多い加工食品の例>
食品名 | 脂質 | 食品名 | 脂質 |
ベーコン1枚(18g) | 7.0g | クロワッサン1個(30g) | 8.0g |
ロースハム1枚(15g) | 2.1g | ミルクチョコレート(10g) | 3.3g |
ウインナー1本(25g) | 7.3g | 牛乳200ml | 7.4g |
さんま1尾(105g) | 25.8g | ポテトフライMサイズ(24.2g) | 24.2g |
マサバ1切れ(100g) | 16.8g | ポテトチップス塩味1袋(60g) | 20.4g |
ショートケーキ1個(90g) | 12.1g | 牛丼並盛 | 22.4g |
オールドファッション1個 | 18.0g | ロースとんかつ(90g) | 37.7g |
5. 最後に
今回はIBD患者さまの食事ポイントをお話ししました。脂質と残渣を減らすコツなどまだまだお伝えしたいことがあります。
当院では、管理栄養士が在籍しており栄養相談を受け付けています。日々の食事に悩んでいる方、最近症状が悪化してどのようなものを食べれば良いかわからない方は、ぜひ一度ご相談ください。
夜寒の折、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。